地理の扉 地理資料集
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農業の工業化に伴い大規模な投資が必要になると、アグリビジネス(食料供給体系(フードシステム)を統括し、農作物の生産、加工、貯蔵、流通(輸送・販売)までを支配する農業関連産業の総称)に代表される企業的農業が発達した。
資本集約的な企業的農業は農薬や化学肥料を大量投下するため、従業者や消費者の健康被害や土壌汚染、地下水や排水の水質悪化などの悪影響を及ぼしやすい。また、大規模な農場で行われる単一栽培(モノカルチャー)は土壌を劣化させるだけでなく従来存在していた生物多様性を低下させる。さらに、遺伝子組み換えやそれに伴う農薬散布の促進は生態系バランスを崩壊させかねない。
日本のジャンボピーマンの輸入元第1位は韓国。主産地はスペインなどだがチチュウカイミバエという害虫が蔓延しているため、ヨーロッパ圏からの輸入は特例で認められている分のオランダ産を除き植物防疫法で排除されている。また、日本へはスイカの輸出も多い。生産量自体は中国が世界の6から7割を占めているが、自国消費が多いため日本の輸入量上位は韓国、アメリカ合衆国、メキシコである。かつてはトマトの生産も盛んだったが、韓国の自国消費が伸長したので現在はそこまで目立った量ではない。
事実上無尽蔵とも言える大気中の窒素を化学肥料に変えるハーバーボッシュ法は20世紀最大の発明とも言われ、現在の大量に肥料を投下する農業形態を可能にした。三大栄養素の窒素、リン酸、カリ(カリウム)はそれぞれ葉や茎の生育、結花や結実、生理発性や根の生育に関与するが、そのうち窒素だけが化学的手法で大量生産することができる。
高収量品種には化成肥料が不可欠だが、適切に利用しないと土壌の微生物を減少させるなど土壌劣化の原因となってしまう。なお、化学肥料の最大の消費国は圧倒的に中国であるが、オアシス農業が盛んな地域などでも消費量が多い。
大気中のN2はアンモニア(NH3)に変えられ耕地に投入される。そのうちの半分程度が植物の成長に寄与するが、残りの約半数は地下水や河川水として流出してしまううえ、一定量はN2Oとして大気中に放出され地球温暖化やオゾン層破壊の一因となる。
また、亜硝酸性窒素や硝酸性窒素を含む水は乳幼児の酸素欠乏症や閉鎖海域(水域)の富栄養化や水質汚濁、それらに伴う赤潮などの発生を助長している。対策としては4R施肥推進運動が行われており、適切な手段で、適切な時期に、適切な分量で、適切な場所に施肥を行うことが推進されている(英文:Right fertilizer source, Right time, Right rate, Right place)。
減反政策開始以来、日本の米生産量は緩やかに減少し続けており、それにつれて生産が盛んな道・県とそうでない県の格差は拡大している。
1970年代初頭、食用のコメの生産過剰に陥っていたことから減反政策が開始され、単純休耕に助成金が出された。1983年には国内自給率の低い作物への転作が奨励されるようになったが、1991年にはピナトゥボ火山の噴火による大気中のエアロゾル増加で太陽放射が遮断され、記録的な冷夏となったため国内は凶作となりタイからコメの緊急輸入が行われた(余談だが、このときジャポニカ米とは性質の違うタイ米をジャポニカ米と同じように調理することで「タイ米はまずい」というステレオタイプが生まれたとか)。1993年のウルグアイ・ラウンドで日本は米などのミニマムアクセスを認め、1995年から実際に米の最低輸入量が設定された。さらに1999年には米の輸入自由化が行われたが、これは「関税を支払えば好きなだけ輸入できるようになった」という意である。2018年、TPP11が発行されるとともに減反政策も廃止された。
米、小麦、とうもろこし、大豆、大麦、ライ麦、えん麦、もろこし等雑穀
キャッサバ、タロいも、ヤムいも、さつまいも、じゃがいも(てんさいはカブ)
さとうきび、コーヒー豆、茶、カカオ豆、天然ゴム、アブラヤシ、ココヤン、ナツメヤシ、綿花、ジュート、ひまわり、アブラナ
バナナ、オレンジ類、オリーブ、ブドウ
えん麦…燕麦(オート麦)、さつまいも…甘薯、じゃがいも…馬鈴薯、ジュート…黄麻、
さとうきび…甘蔗、ナツメヤン…デーツ、てんさい…ビート(砂糖大根)
基本的に自給的。永らくタイが輸出の首位だったがインドが輸出を活性化させたため、現在はインドが首位。アジアが生産と消費の中心。
西アジア原産だが全世界的な主食。人口大国では生産が多くなる。国際取引が盛んだが、フランスはEU域内向け。
中南米原産。メキシコでは主食で輸入も多い。アメリカではバイオ燃料に使用されるため生産が盛んな他、大豆の裏作として生産される。
ブラジルなど南米では中国向けの輸出目的で生産が急拡大し、首位もブラジルがアメリカ合衆国に取って代わった。輸入の6割は中国。
乾燥地で生産が拡大しているが、あいかわらず国土にBやAwなどの気候区を抱える大国で生産が盛ん。中国は別として、先述のうち先進国で輸出が盛んで、国内に衣類工場の多い発展述上国で輸入が盛ん。
ブラジル、インドで多い。中国が5位であることに注目。インドでは神聖視され肉は食されないが乳製品や燃料の供給元として重用される。しかし、インドでは水牛は牛判定ではないそうで、こちらは屠殺されおもに輸出用途に供される。国内ではベジタリアンが多いので牛肉でなくともそもそも肉の消費量が伸びにくい。水牛と牛が混ぜられた統計を出されるとインドが牛肉の輸出大国になるので鬱陶しい。
半数近くが中国で飼育されている。イスラーム圏では不浄とされるため食はおろか飼育すらされない。輸出は欧米が中心。
粗食に耐える。北アメリカ大陸では少ない。ヨーロッパではイギリスが最多。食肉、羊毛、乳製品用など多用途。
アメリカ合衆国資本が独占的に生産を支配していた状態を指してバナナ帝国という言葉がかつてあったように、中央アメリカでのプランテーション栽培が盛んで、輸出の首位はエクアドル、次いでグアテマラ。3位はフィリピンだが続いてコロンビア、コスタリカ。一方、バナナは主食として優秀なため自給目的でも生産され、生産量自体は首位から順にインド、中国、インドネシア、ナイジェリア。
いも類が中心で、世界的にはキャッサバが相当に生産量が多く(古めの統計では圧倒的だった)、ついでヤムいも、かなり差があってタロいもの順で生産されている。なお、ナガイモやヤマイモはヤムいも系で、サトイモがタロいも系である。
どの熱帯性いも類もナイジェリアが生産量一位(ナイジェリアは2023年の推計で人口約2億2000万人)で、ナイジェリアは世界的な割合に比べヤムいもの割合が高い。キャッサバはアフリカや東南アジアで生産が盛んで、ヤムいもはアフリカで多い。タロいもは絶対値として目立つわけではないがランキングに中国が該当していることで判別できる。
なお、アジアに比べてアフリカは農業生産性が低く、流通・保管技術も未発達なため、食料価格がアジアの倍程もあることに留意されたい。
旧植民地時代、本国にとって最優先なのは植民地の人々の食糧生産よりもプランテーション作物の生産であるため、国土の肥沃なところを占拠しがちである。ガーナやコートジボワールでは植民地時代以来のプランテーションを国有化や現地資本化し小作農化を進めているが依然として降水量の多い土地を占拠し続けている。
ブラジルはファゼンダ、アルゼンチンはエスタンシア、アンデス諸国はアシエンダ
アマゾン盆地原産の植物だが、イギリス人に持ち出されマレー半島周辺でも栽培されるようになった。1900年代にはイギリス支配下のマレー半島でプランテーション栽培が行われ、モータリゼーションの進展とともにタイヤの原料として生産を拡大した。ところが1926年にドイツで合成ゴムがつくられて以降天然ゴムの代替になりうる合成ゴムが登場し、1960年代には老木が増加したこともあって生産が縮小するかと思われた。しかし、1990年代以降は自動車の大型化に伴い天然ゴムの需要が再燃し、21世紀に入ってからは天然ゴム4割、合成ゴム6割の割合で安定して増加している。
なお、当初ブラジルはゴム生産の独占を守るためゴムノキ(パラゴムノキ)の苗や種子を持ち出すことを禁じていたが、イギリス人が持ち出した。