地理の扉 地理資料集
「自然物に労働を加えて、使用価値を創造・増大するため、その形態を変更・移転する経済的行為」(広辞苑より一部抜粋)。
ex)第三のイタリア(ヴェネツィア、ボローニャ、フィレンツェ)
・メリット:同種の企業が集積することで仕入れを共同化し、一度に大量の商品を取り扱うことでコストの低減を図る(=卸売業が進出する)。また、企業間の競争と分業 / 協業(技術や情報の共有、他者との融通や委託なども含む)が促進され、技術水準やサービス水準の向上が期待される。設置にコストがかかる工業インフラ(港湾設備や道路、送電線、上下水道など)を共有できるという利点もある。
・デメリット:過密による混雑(交通渋滞など)、騒音や排気ガスによる公害の発生の可能性がある。さらに事業所の立地により重要が拡大することで地価や賃金水準が上昇し、コストが上昇する。
個人を相手とする仕事の従業者は人口に比例する傾向にある。一方で企業向けサービスは本社などの機能が集積しやすい大都市や産業の中心都市で発展しやすい。豊田市は後者の好例。
【資料】日本の工業製品販売額ランキング
1位:豊田市(13兆円)
2位:市原市(5.3兆円)
3位:倉敷市(4.6兆円)
4位:川崎市(4.5兆円)
5位:横浜市(4.3兆円)
1960年代に行われた第一次全国総合開発計画のもとで高度経済成長を成し遂げた日本であったが、1970年代以降二度のオイルショックに見舞われ国内での工場建設は下火となった。バブル景気が崩壊すると地方では工場の閉鎖や縮小、海外移転が相次ぎ産業の空洞化が問題となった。
一方、かねてより過密や地価の高騰をうけて生産部門が撤退し開発部門が立地する傾向にあった都心の臨海部では、工場跡地や操車場跡地をオフィス化・商業地域化する取り組みが進められ、汐留や品川、大崎などの副都心が形成されるに至り都市機能を分担している。豊洲や品川シーサイドも代表的なウォーターフロント開発の行われた地域である。
工場は空襲からの疎開目的で移転することがある。これは国内に限らず、第二次世界大戦中のソ連がウラル以東への工場移転を進めていたという例もある。
地元の資本にが長期間に渡って技術を熟成した結果、その地域の特産となった産業。門真のパナソニック...はどちらかというと地域産業のカテゴリが妥当か。以下、主な地場産業を列挙する。豪雪地帯では裏作が不能なため家内制手工業が発達した。
南部鉄器(盛岡)、伝統こけし(鳴子)、将棋駒(天童)、結城紬(結城)、金属洋食器(燕(いわゆる「燕三条」))、輪島塗(輪島)、眼鏡枠(鯖江)、刃物(関)、西陣織(京都)、団扇(丸亀)、タオル(今治)、有田焼(有田(読みは「ありた」))、竹細工(別府)、大島紬(奄美)
沖縄は米軍基地があり観光も盛んなことから接客業に従事する比較的若い女性が多い。一方で宿泊業は比較的高齢の女性が従事していることが多い。
サービス産業化。商業や金融、情報の比重が産業の中心となっていくこと。脱工業化を伴う。経済水準が向上する一方、マテリアルフットプリントは減少する。知識集約型の産業であるコンテンツ(娯楽)産業も第三次産業である。余談だが、ECは漢字で表すと「電子商取引」。サービス経済には情報通信業と金融業が該当する。
なお、ソフトウェア業の従事者は国内では2011年時点で67万人と相当に多く、これは国家公務員の58.5万人(2019年)や医師の34.3万人(2022年、歯科医師含まず)よりも多い。必ずしも特別な資格を必要としない職務としては警備員の58.4万人(2023年)よりも多い。
グローバルな企業(多国籍企業)は国際性の高い都市に進出する傾向にある。資本・情報・人材の動きが活発(流動性が高い)で交通の便が良いことが重要である。また、グローバル都市は効率化と外化(外注が増える)ことで中間層労働者が減少する。
【参考】日本の海外進出法人数ランキング
中国、アメリカ合衆国、タイ、シンガポール、香港、インドネシア、台湾、マレーシア、韓国、台湾
中国の産業はアモイ(厦門)、スワトウ(汕頭)、シェンチェン(深セン・深圳)、チューハイ(珠海)、ハイナン(海南)島ら経済特区やシーアン(西安)など西部大開発の拠点を中心に急速な発展を遂げている。シーアンはデジタルシルクロードと呼ばれる地域に該当する。そもそも(日本を含め)アジアでは電気製品の生産が盛んであるが中国は圧倒的で、白物家電や民生用情報機器の生産では圧倒的シェアを占める部門も多い。
電気製品の組立作業は労働集約的な分野であり、豊富な低賃金労働力を有する地域で生産がさかんとなりやすい。中国の人件費は上昇傾向にあり、チャイナプラスワン[→チャイナプラスワン]の要因の一つにもなっているが、概ね人件費は 中国 > アジアNIEs > 先進国 と考えると良い。モジュール化(企画化)の伸展も中国での生産拡大に一役買った。
【資料】中国の比率が高い電化製品
パーソナルコンピュータ:98.1% タブレット端末:81.8% 携帯電話:78.3% デジタルビデオカメラ・デジタルスチルカメラ:60.4% ほか
中国は工作機械の稼働台数が多いが、今のところ日本やドイツに比べてNC技術は未熟で、輸出はあまり多くない(国内向けが中心)。
パーソナルコンピュータは製品のライフサイクルが短いため、買い替え需要が常に存在する。1995年ごろはヨーロッパやアメリカ合衆国などの先進国での生産が中心だったが、相応に生産台数も少なく年間5万台程度だった。2000年代にかけては欧米での生産は維持されつつもアジアでの生産が拡大し、年間生産台数も13万台となった。しかし2005年にはすでに生産の殆どを中国が占めるようになり、他のアジア地域でも一定の生産が維持されていたが欧米のシェアは殆どなくなった。年産19万台。2010年代以降は9割以上を中国が占めるようになり、他のアジア地域の割合も低下した。
資本主義経済のもとで市場での需要と供給の関係で価格が決定され、それに応じて生産者と清費者の行動も変化する経済。対して計画経済では社会主義の国家や地方公共団体が生産から販売までを決定する。計画経済と異なり市場経済では生産者が余剰生産物で利益を出せるため農業などの生産性は向上する。これを期して導入されたのが1986年以降のベトナムにおけるドイモイ(刷新)の一部や1990年代以降の中国における社会主義市場経済である。
一方で、民間企業を公設企業が補完することは資本主義諸国でも行われており、いわゆる大きな政府はその性質が強い。このようなものをひっくるめて混合経済と呼ぶが、特に後者で国家の経済に占める公共部門の割合が高いもののみを指すこともある。
各地で加工貿易が盛んで、中国や韓国、東南アジアでは安い部品の生産が行われ、日本からは高付加価値の中間財が供給される。東アジアの中でも東南アジアは特に域内分業が盛んで、各地で完成品が輸出されるほか、製品によっては一度日本を経由して完成品が輸出されることもある。