地理の扉 地理資料集
石油取引の大きな品目には原油と石油製品がある。石油は最大のエネルギー源であり、海上輸送量も最多を占める。ただし、国内消費量もそれなりに多く世界で算出される原油のうち4割強は産出国で消費されている。
西アジアはもともと遊牧やオアシス農業が中心の地域であったが、60年代のエネルギー革命以降石油メジャーによる投資が進み油田地域は繁栄した。70年代以降資源ナショナリズムの傾向が高まり、2度の石油危機で原油価格が高騰し莫大な資金が中東地域に流入した。中東諸国はその資金を利用して90年代以降産業の多角化が進められ、不動産への投資やハブ空港・リゾート地の建設が活発化した。これにより西アジアは資本の集積地と化し、建設のための労働力として南アジアや東南アジアから男性移民が増加した。
資料:簡易年表
1960年:OPEC発足
1973年:第一次石油危機
1979年:第二次石油危機
1983年:サウジアラムコ国有化
1991年:湾岸戦争
1993年:オスロ合意
2000年代以降生産が拡大したシェールガスなど、単に産出場所を開発するだけでは採取できない非在来型天然ガスと呼ばれる天然ガスの供給が、技術革新による採算性の向上で増加している。アメリカ合衆国でその変化が顕著だが、必ずしも米国に限った話ではない。2010年代以降、中国やインドが燃料の重心を従来の石炭からLNGに転換したため、需要も増加している。また、LNGは燃焼時に温室効果ガスである二酸化炭素や大気汚染物質である硫黄酸化物を排出しづらいという利点がある。採掘時の天然ガス自体に硫黄分は含まれているが、液化する際に不純物として除かれるため、一度液化された場合はもちろん酸化物は排出されないという仕組みである。
参考:なぜ脱硫されるのか
天然ガスの主成分であるメタン(CH4)の融点は-183℃・沸点は-161℃であり、混入している硫黄分(二酸化硫黄・SO2)の融点は-76℃で沸点は-10℃であるため、メタンを液化する段階で先に硫黄分の方が状態変化を起こすため取り出せるという寸法。
天然ガスの輸送にはLNG船のほかにパイプラインという手段もある。LNG船はいちいち輸送設備を整備する必要がないため産出国から離れていても(近隣でなくても)輸送できる利点があり、島国の日本は無論、インドなどでもLNG船の割合が高い。一方でパイプラインは一度敷設してしまえば長期間輸送しつづけられるため、長期的には廉価に輸送することができる。中央アジアと中国の間で敷設が進むほか、ロシア国内やロシアと欧州諸国の間にも敷設されており、一方でロシアの干渉を避けるために敷設されたBTCパイプラインなども存在する。ただし他国の領土を通る場合もあるなど、情勢不安による供給途絶のリスクは常につきまとい、逆に度々欧州から非難を受けているロシアは外交カードとしてパイプラインを活用している。
石炭の産出量は発展途上国の急速な経済発展が見られた2000年代から2010年代にかけて急増している。一方で天然ガスは順調に増加しているものの急な増減は見られない。石油は1973年と1979年の二度にわたるオイルショック(石油危機)時に産出量が減少している。
北米…北極海岸、アラスカ南部、ロサンゼルス近郊、メキシコ湾岸 ほか
南米…大陸北部、大陸南端
アフリカ…ギニア湾岸、アンゴラ沖、チュニジア南方、リビア・エジプト北部