地理の扉 地理資料集
世界の淡水利用のおよそ7割は農業用水が占めている。アジア地域では、もともとの人口の多さに加え、水田による稲作が広く行われているため、農業用水の使用量が突出して多くなる。北米は、先進国が多く人口増加も比較的安定しているが、センターピボット式灌漑農業や畜産[→バーチャルウォーター]が盛んなため、農業用水の割合が高い。オセアニアは人口が少なく、農業用水の絶対量は少ないものの、水利用全体に占める農業用水の割合は比較的高い。なお、センターピボット灌漑はアメリカのグレートプレーンズ地域で発展した技術である。
生活用水は人口に比例し、先進国のほうが工業用水の割合が高くなる。
人口が非常に密集(人口稠密)しており、国土も狭いため、大規模な貯水池の確保が困難である。そのため、海水の淡水化、高度な下水処理による再利用、そしてマレーシアからの水の輸入によって必要な水資源をまかなっている。水源の内訳は、貯水による供給が約10%、再生処理水が約40%、海水の淡水化と輸入水がそれぞれ約25%ずつとなっている。
参考:人口密度ランキング 単位:人/k㎡(→外務省)
1 🇲🇨モナコ 17,604
2 🇸🇬シンガポール 7,595(人口全体は600万人ほど)
3 🇧🇭バーレーン 1,852
4 🇲🇻モルディブ 1,738
5 🇲🇹マルタ 1,620
6 🇧🇩バングラデシュ 1,301
国土の大部分が乾燥地帯に位置し、年降水量はおよそ450mmとシンガポールの5分の1程度である。比較的人口稠密で、かつては地表水や地下水によって水資源をまかなっていたが、現在では高度かつ最先端の海水淡水化技術(これはサウジアラビアにも共通する)を活用している。また、点滴灌漑(マイクロ灌漑)[→点滴灌漑]と呼ばれる技術を導入し、従来の用水路やスプリンクラーなどの散水方式に比べて大幅に水の使用量を抑えている。
地下水を汲み上げ、回転するムーブから円形に散水する灌漑方式。散水だけでなく施肥や農薬の散布も行われる。ロッキー山脈東麓のアメリカ合衆国はグレートプレーンズで発達した技術だが、現地で利用されるオララガ帯水層は化石水であり、過剰な揚水により枯渇や土壌の塩性化などの問題を抱えている。一時はサウジアラビアでも盛んで、国内需要を超える野菜を生産していたが、あまりにも持続可能性が低いため当地では衰微している。上空から見ると生前と緑色の円が荒涼とした大地に連なっている。ピボットの濁点の場所に迷った時は英語「Pivot」の音写だと思い出せば良い。