地理の扉 地理資料集
人が住むために防災をするのである。
傾斜地での土砂災害は、地下の帯水層に由来することが多い(地表近くの透水層と深くの不透水層の間に地下水の流れができ、降雨で地下水の量が上昇しその上部の土層が滑る、崩れるなどする)。当然ではあるが、重力が存在するため下に滑り出すのである。
近年の水害の被害の拡大は3つの要因で説明する。1つ目は発生しやすくなる、2つ目は悪化しやすくなる、3つ目は食らいやすくなる、である。1つ目は異常気象や海水温の上昇による(熱帯)低気圧の強大化、2つ目は森林伐採や都市化による保水力の低下、3つ目は人口増加で発生したスラム(などのインフォーマルセクターに従事するような者が多い貧困地域)が低湿地や急傾斜地など本来居住に不適な土地へ広がること、などが挙げられる。
河岸段丘の段丘面は水没しにくい。
ゲリラ豪雨による短期間に集中した降雨が増加する一方、舗装の増加などで表流水(地中に浸透せず、地表面を流れる水)が増え都市域の小河川や下水道の排水能力が不足することで発生する内水氾濫が注目されている。河川からの溢流ではない点が通常発生する氾濫と異なる点である。
氾濫の発生を予防するために中流・下流域でできることとして、川幅の拡張や河道の掘削や浚渫、土質の堤防建築(築堤)や護岸整備、遊水池や多目的遊水池の建設が挙げられる。
地震や火山は変動帯に分布していることが多い。環太平洋造山帯やインド亜大陸北方、ペルシア湾岸、アナトリア半島、大西洋中央海嶺などに多く分布する。火山は環太平洋造山帯やスンダ海溝沿いの島々、アフリカ大地溝帯〜紅海、イタリア半島や大西洋中央海嶺などに多い。いずれもプレート境界とは全く関係ないと思われる地域でも発生することがあることには注意。日本は4つのプレートの境界であるため、主に付加体と火成岩からなる複雑な地帯構造をしており、プレート型・断層型ともに地震が多い。
以下、主な地震を列挙する。マグニチュードは恐らくすべてモーメントマグニチュードである。1950年のアッサム地震(アッサム・チベット地震)はアッサム地方で発生した世界最大級の内陸地震で、横ずれ断層が原因だった。M8.6。震源が800kmに渡ったカムチャツカ地震(1952年、M9.0)、観測史上最大の地震であるチリ地震(1960年、M9.5)、大津波が発生したアラスカ地震(1964年、M9.2)、震源から離れたメキシコシティで被害が拡大したメキシコ地震(1985年、M8.1)、これまた大津波を生じたマウレ地震(チリ、2010年、M8.7~8.8)、福島第一原発事故を引き起こすとともに15,844名の死者と3,394の行方不明者、40万戸近い被害家屋(平成24年1月12日現在)という甚大な被害を引き起こした東北地方太平洋沖地震(東日本大震災。2011年、M9.0)。
マグニチュードの整数値が2大きくなると威力は1000倍になる(1だと√1000≒32倍)。
宮古市田老地区(旧下閉伊郡田老町、2005年以降宮古市)を例にとる。昭和三陸地震で被害を受けた田老地区には10mの高さの防潮堤があったが、津波は17.2mに達し防潮堤近くに低地に広がった市街地と港湾施設が壊滅的な被害を受けた。津波の強力な引き波は、地上のものをこそぎ取っていく。
震災後、住宅地は付近の幹線道路から取り付け道路を登った先にある高台への移転が進められ、平野部の旧市街地には道の駅などの商業・観光・交流施設が整備された。また、インフラ整備と並行して道路の新設が行われ、2021年には三陸自動車道が全通した。これは沿岸部から少し離れた山側に建築された高規格道路で、リアス海岸の湾奥に点在する村々を結節して大災害時に孤立を防ぎ救助舞台の派遣を迅速化するとともに平時の救急搬送などを効率化することも期待されている(震災当時の太平洋岸ではます南北に縦貫する国道を復旧させ各沿岸地域へ救助部隊を派遣する「くしの歯作戦」がとられた)。
2025年には新たな伝承施設が開館した(→NHKニュース)。
トンガ(首都ヌクアロファ)のフンガトンガでは2009年より火山活動が活発化し、2022年に最大に達した。この時の噴火は過去百年で最大の自然現象とも言われ、約800km離れたサモアでも噴火に伴う音が聞かれ窓ガラスが割れるなどした。
この際、発せられた地震波による津波だけでなく、噴火による大気振動(時速300kmを超えるラム波)による気象津波も観測された。これは当日中に約8000km離れた日本にも1.2mの津波を到来させ、国内では8県約23万人に避難指示が出された。さらに、地中海にも到達していた。
プラズマバブルなどに関する説明もあったが、難解なので割愛(→サイエンスポータル)。
津波は河川を伝って内陸まで遡上する。津波の高さは平均海面潮位との差で出され、検潮所か痕跡高を用いる。一方、遡上高は津波が陸に駆け上がった時の最大到達高度と平均海面潮位との差を用いる。そのため、湾奥や岬などを中心に「高さ」よりも値が大きく出やすい傾向にある。浸水高は地面が基準で、津波がより入り込みやすい河川沿いで値が大きくなりやすい。
津波からの避難場所は現実的に逃げ込める場所でないと意味がないので、近隣に高所がなく斜面もない沿岸部などでは避難タワーが設置される。