地理の扉 地理資料集
※一定以上の分量をもつ国や地域を独立した項目としています。
発電量の7割を地熱発電が、2割を水力発電が占める。開発されている地熱の熱源の2割は暖房用途に用いられ、残りは発電に充てられている。人口約30万人と非常に少ないため、ほとんど再生可能エネルギーのみで需要を賄うことができている。さらに電力の8割を輸出向けアルミニウムの精錬を中心とした工業部門に充てている。漁業も盛ん。
イギリスなどに海底ケーブルを通じて売電する構想も存在するが、電力価格の上昇の懸念や、他国の介入を危惧する意見から、進展は見られない。
ユーロ圏かつ英語圏であるうえ、税制上の優遇措置が取られているためアメリカ合衆国系のICT企業の立地が盛ん。
カスピ海に面し、イランと国境を接する。CIS構成国で、国内にナゴルノ・カラバフ自治州の独立問題を抱える。産油国であり、バクー油田やカスピ海油田などが産業の基盤で、バクーからトルコのジェイハンまでBTCパイプラインが敷設されている。
BTK鉄道など、位置・地理的中立性を活かして貨物の中心地を目指している。バクーを中心とする、シルクウェイウエスト航空など中国とヨーロッパ間のコンテナ輸送の中継地である。
地中海性の気候で、ブドウや綿花などの栽培が盛ん。
[→アメリカ合衆国]
アラビア半島東岸に位置し、ペルシア湾に面するアラブ首長国連邦(UAE)は冬季に多雨な気候で、冬から初夏にかけて北西季節風に由来する「ショマール」という砂嵐が吹く。山は最大で3000m近くに到達する一方、近海は遠浅で温暖な気候のためサンゴ礁[→大地形・小地形|サンゴ礁]が発達し魚類も豊富に見られる。かつては真珠の採取も盛んだったが、日本の御木本氏の養殖成功と発展、さらに世界恐慌のあおりを受けて衰退した。
UAEは都市国家規模の複数の首長国と面積の7~8割を占めるアブダビ首長国で構成されている。連邦の国土は日本の北海道とほとんど同程度である。
連邦中最大の面積を誇るアブダビ首長国にはUAEの首都が位置しているほか、連邦随一の豊富な油田を持つ産油国でもある。ドバイの面積は順位的にはアブダビに次ぐが、その差は15倍を超える。石油資源に恵まれなかったドバイは工業化を試みたが国内市場の小ささと熟練労働者の不足で成功せず、現在は世界の金融センターとしての地位を確立している。ドバイはUAE中最大の都市でもある。
以降は日本人からするとマイナーだが、アジマン首長国は漁業が中心で、シャルジャ首長国は人口・面積共に3番手で、漁業と真珠業の他にはオアシス農業で生計を立てている。ウム・アル・カイワイン首長国は連邦の中でも小さな国土で、元々は海賊を生業としていた勢力であり現在は漁業とオアシス農業(ナツメヤシ栽培)が盛んだが社会は閉鎖的である。ラス・アル・ハイマ首長国はペルシア湾岸から山岳地帯にかけての農業国。フジャイラ首長国は地中海に似た風光明媚な地域で、水に恵まれ山岳地帯ではカナートも見られる。フジャイラ首長国の沖合では油田開発が進められているとのこと。
イギリス植民地時代にはカタールやバーレーンもセットで扱われていたが、石油が産出する両国は連邦に加盟しなかった。連邦の予算はほとんどアブダビが負担しているという資料もあったが、現在はドバイが経済的に発展しているため若干古い資料である可能性がある。
人口は約4500万人。
大ブリテン島
北端東部の切れ込み(カレドニア地峡)を少し辿るとネス湖があり、さらに南東に進むとシリコングレンがある。シリコングレンを過ぎて西岸に着いたところがグラスゴーである。グラスゴーと緯度をほとんど同じくして東岸にあるのがエディンバラ。エディンバラのある切れ込みがスコットランド地溝帯であり、その南部にはサザン高地が広がってイングランドとスコットランドの境界をなしている。
ウェールズにある主な都市はウェールズ南端のカーディフのみで良い。ウェールズ北東端付近にリヴァプールがあり、そこからイギリス中央分を縦貫するペニン山脈方向へ西進するとマンチェスターがあり、さらに西進して分水嶺を越えるとやや北方にリーズがある。リーズからそのまま北上すると、突き当たる海岸部にはミドルズブラがあり、海岸沿いに南下するとキングストンがある。ドーバー海峡直上のエスチュアリーを遡上すると湾奥に存在するのがロンドンで、マンチェスターとロンドンを結んだ直線のちょうど中点付近がバーミンガムだ。イギリス南端には大陸に面した都市として、東から順にドーヴァー、ポーツマス、プリマスが存在する。
アイルランド島
北アイルランドのイギリス側沿岸の中央部にあるのがベルファスト。アイルランド島のイギリス側中部にあるのがダブリン。
正式名称はイタリア共和国。地中海に突き出したイタリア半島を国土の中心とする。北部のアルプス山脈はフランスやスイス、オーストリアとの国境をなす。また、半島部を南北にアペニン山脈が縦貫する。古代ローマの中心地として繁栄し、中世にはヴェネツィアやジェノヴァなどの都市共和国が中継貿易で栄えた。大航海時代以降は貿易の重心が大西洋岸に移り一時衰退するが、1869年にスエズ運河が開通するとにわかに東西貿易の拠点として脚光を浴びる。中世以来都市共和国や諸侯、教皇領が分立し近代の統一国家の形成に遅れをとった。
人口は5,924 万人(2021 年)と日本の半分ほど。一人当たりGDPは36,000ドル(2021年)ほどと欧州で特に経済的に発展しているフランスやドイツには劣るが日本(約39,000ドル)に近い値。国内の社会的・経済的な南北格差が激しい。
国土の7割が山岳・丘陵地だが傾斜地も農業用地として用いられており、国土面積に占める農用地面積の割合は 41%である。農業生産額はフランス、スペイン、ドイツに次いでEU第4位(2021 年)である。北部は温暖湿潤気候に位置し雨量が多く、灌漑が発達しているため水稲・軟質小麦(組織が砕きやすく粉状になり製菓に向く)・酪農が中心で西欧型農業に近い。南部は地中海性気候で通年乾燥し温暖で、特に夏季に降雨が少ないことから対乾性の強い硬質小麦(グルテン含有量が多く製パンや製麺に向く)・オリーブ・柑橘(オレンジ)等の地中海型農業が中心。ワイン用ぶどうは全国で栽培されている。以上の他にとうもろこしやトマトの栽培も盛んである。
農産物の輸出はワインや調製食料品(調理済み食品)、チーズ、パスタ類、チョコレート製品が上位。輸入は小麦、チーズ、オリーブ油、葉巻たばこ、豚肉が上位(いずれも2021年)。
日本とイタリアの貿易は日本側の大幅な輸出超過。日本は自動車は鉄鋼製品(鉄板)、二輪自動車を輸出しており、たばこや自動車、有機化合物を輸入している。
イタリアは南北の経済格差が激しい。南端のタラントは軍港として発展したが、イタリア政府の南部振興政策の中心として鉄鉱コンビナートが建設された。
国土の大部分は乾燥地帯で、平野の多い国家。北部の高原地帯周辺では降雪もあり、降水量が比較的多くなっている。国土中央部のメソポタミア平野を貫流する外来河川であるティグリス川・ユーフラテス川は湿潤地域であるトルコを水源に持つ。
ティグリス川・ユーフラテス川の水を小麦栽培などの灌漑用水に利用している。両河川とも外国の湿潤地域に端を発することから、イラクは水資源の他国依存度が高くなっている。
国土の大部分が山岳地帯かつ乾燥地帯であるが、冬季には若干の降水がみられる。北部のカスピ海沿岸は地中海性気候。新期造山帯のザグロス山脈やイラン高原では冬季に降雪がみられる。
ペディメントとよばれる、平野から立ち上がった山麓の緩斜面に浸透してできた地下水を遠くまで導水して灌漑に利用しており、この際に蒸発を抑えるために編み出された技術がカナートである。カナートと同様の水路はサハラ砂漠ではフォガラ、中央アジアではカレーズ(キャリーズとも)、中国西部ではカルアンチン(カルナンチン・カンチンなどとも)とよばれる。
地下水の主たる水源は融雪水であるが、20世紀半ばから動力ポンプによる地下水の直接汲み上げが増大し、供給される地下水よりも利用される水のほうが多くなったため、枯渇したカナートも増加している。なお、以上の事情からイランの地下水への水資源賦存量は多くなっている。
インド亜大陸の全域にわたって広がる国家。近年人口が中国を超え世界1へ躍り出た(約14億年、ただし入試で使われる統計は若干古いことが多いので注意)。「バーラト」は「インド」と並ぶ正式名称。若干思想を感じるが、興味深いので記載した。
北部にはパンジャーブ地方があり、主な都市は首都デリー。東部にはベンガル地方があり、コルカタやジャムシェドプルがあるほか、シングムーブ鉄山とダモダル丹田も位置する。アッサム地方も東部。西部にはグジャラート地方があり、アーメダーバードやムンバイが主な都市。南部にはバンガロールやチェンナイなどの都市が存在する。
西北部は砂漠気候で、北部のアムリトサル北方からニューデリーを通りデカン半島中部南端にかけてステップ気候が広がる。半島部と沿岸部のほぼ全域をサバナ気候が占めるが、南西岸のみ熱帯モンスーン気候である。南西岸には北からムンバイ、ゴア、カリカットなどの都市が存在するが、このうちではムンバイだけがステップ気候に属する。南東岸のポンディシェリやチェンナイ(マドラス)やガンジスデルタのコルカタは無論サバナ気候である。半島部以北はステップ気候の穿入部を除いて温暖冬季少雨気候である。また、サバナ気候帯の一部にスポット状に存在する箇所もある。国土中部北方のアグラやバラナシ、バングラデシュの東側の地域のインパールなどが該当する。
インド半島東部の沿岸から、ヒンドスタン平原の東部、さらにアッサム地方にかけてコメの栽培が盛ん。北西部(パンジャーブ地方)からガンジス川上流のヒンドスタン平原の西部にかけては小麦の栽培が盛ん。要するに西部が小麦で東部が米である。デカン高原では雑穀が中心。デカン高原中部では綿花栽培も盛んである。国土全体が概ね農業地域だが、粗放的で生産性の低い農業が行われている。
近年、インドでは生乳の生産量が急増している。経済発展による生乳・乳製品の需要増加に加え、冷蔵設備・輸送設備が充実してきたことや酪農協同組合の設立による生産の安定も理由にあげられる。さらに、緑の革命により飼料となる穀物の増加もあるが、一方で緑の革命のような膨大な初期投資をせずとも始められ、収入源となるのが酪農の利点でもある(緑の革命→白い革命→ピンクの革命)。
なお、白い革命では牛だけでなく水牛の乳生産も拡大した。そのため、白い革命の「白」は乳をひっくるめて「ミルク」を指すと説明される。
植民地時代は綿や鉄鋼の分野でイギリス資本も一定の存在感を放っていたが、1947年にイギリスから独立を果たすと基幹産業の国営・公営化による混合経済体制を取り、さらに外資の排除を進めた。しかし官営企業は経営効率が悪く補助金が財政への負荷となったうえ、外資排除の結果海外からの技術移転が進まず国内の技術が発展しなかった。
そこで1980年代以降は規制緩和が行われ、1991年には湾岸戦争による原油価格の急騰をうけ原油輸入国であったインドでは外貨が不足したため経済自由化政策がとられ外資の導入と市場経済化が進められた。
パールシーはインドのゾロアスター教徒。タタ財閥の創業者一族もパールシーである。また、ジャガーやランドローバーは現在タタモータースが保有するブランドである。
インドでは英語話者が多いことや欧米との経度差、安価な人件費に対して進んだ理数系教育などを利用してICT産業が発達しており、バンガロールはインドのシリコンバレーと呼ばれる。チェンナイやムンバイ、デリーなどでも盛んで、コールセンターの立地も多い。
【参考】インドの産業
高度人材の育成が進んでいるとはいえ、まだまだインドの人件費は安い。アメリカ合衆国とほぼ半日の時差があり、理数系教育が進んでいて英語話者の多いインドには欧米資本のコールセンターやICT産業が立地しやすい。
【参考】インドの都市 人口ランキング
1位:ムンバイ 2位:デリー 3位:バンガロール(6位:チェンナイ)
世界1位の石炭輸出国(産出量では3位)。パーム油では輸出・生産ともに世界1位。工業化の進展が比較的遅く、国内人口が多いことから輸出依存度は低めである。
マレー語の一方言だったものを国語としたのが現在のインドネシア語である。これは多数の島からなり国土がバラバラであるインドネシアに共通する言葉として、国民統合を図ったためである。
ジャワ島
インドネシアの首都ジャカルタや工業・港湾都市のスラバヤを擁し、人口の6割が集中する。そのため、インドネシア政府はボルネオ島に造営中の新首都ヌサンタラへの首都移転を決めている。なお、スサンタラは依然密林である。(建築は進んでいるが)。
サバナ気候が広がる島の東都ではコーヒーや茶、サトウキビの栽培が行われ、コーヒーの生産量は世界で3番目である。熱帯雨林気候が広がる西部では天然ゴムやカカオの栽培が盛んで、天然ゴムの生産量はタイに次いで世界2位である。山がちなため棚田での稲作が行われる。
人口は約350万人。
最高峰はチンボラソ(6310m)。港湾都市のグアヤキルが最大の都市。海老の養殖が盛んなほか、1973年から1993年にかけてと2007年から2020年にかけてOPECに加盟していた。
国内の産業構造や社会は先進国だが、輸出入品目が原材料中心で発展途上国と同様の様相を呈している。しかし、2006年に国連が提唱したESGの観点に基づいた投資[→ESG投資]が進んでいる。産業は大規模・機械化されたものが中心で、労働集約的な製造業は未発達である。
年率5~6%の高い経済成長を記録している一方、国内産業は未発達で、産業の構成比率をみると紅茶・茶の次はバラなどの花卉栽培、除虫菊の栽培、外資系の繊維業がランクインする。
[→旧ユーゴスラビア]
サンゴ礁が国土の大半を占めており、モルディブなどと同じく水没の危機に瀕している。
最高峰はキリニャガ(ケニア)山(5199m)。アフリカ最高峰のキリマンジャロ山(5895m)はタンザニア領。ナイロビが最大の都市。
人口は約5000万人であり、GDPも比較的大きい。石炭や石油を産出する。
コンゴ川の西、赤道直下のコンゴ盆地に位置する。1958年以降フランス共同体内の自治共和国となり、1960年のアフリカの年にアフリカ初の「人民共和国」として独立した。コンゴ労働党の手で1970年にアフリカ初の人民共和国となった。1991年以降は複数政党制に移行、以降は国名をコンゴ共和国に改めている。1997年から内戦が続いたが、アンゴラ軍の支援で終結、2002年にアンゴラ軍は撤退。
石油に依存するが、木材輸出も盛ん。パーム油などの生産も行われる。内戦で経済は打撃をうけ、主にフランスの支援をうけて復興を進めている。対外債務の増大問題が顕在化。
通年亜熱帯高圧帯の影響下にあり、国土の全域がほぼ砂漠気候である。また、国外から流入する大規模な外来河川も存在しない。
グレートプレーンズで開発されたセンターピボット方式による灌漑が1980年代以降拡大し、一時は小麦の自給(および余剰分の輸出)を達成した。
しかし、水源となっているサウジアラビアの帯水層は化石帯水層(新たな地下水の供給が見られない)であり、汲み上げの増大が枯渇のリスクを高めたことや、乾燥地に灌漑を行うことによる毛細管現象由来の土壌の塩性化が発生したことをうけ、2000年代後半にセンターピボットが廃止され、灌漑農地や小麦の生産量は激減した。
※塩性化:土壌塩化、塩類集積、塩害。灌漑の余水が地下に浸透し塩類を溶かし、それが毛細管現象で地上に出て蒸発する際に塩類だけを残す。
公用語が英語。
シンガポールは少子化対策として「高技能者」を受け入れた。
最高峰はモンテローザ(4634m)。ドイツ語圏のバーゼルが最大の都市。欧州最高峰のモンブラン(4807m)はイタリアとフランスの国境。
イベリア半島は西ヨーロッパの中では比較的工業化が進んでいないが、ポルトガルのリスボンでは造船・機械業が盛んな他、マドリードやバルセロナなどスペインでは自動車工業の立地がすすむ。スペイン北岸のビルバオには鉄山があったが、閉山した。
地誌や現在の内容は「ロシア連邦」を参照
ソビエト連邦、ソ連とも。1922年のロシア革命で成立し、1991年に崩壊した世界初の社会主義国家。旧ロシア帝国領や周囲の領土を糾合し、ユーラシア大陸の東西に広がる共産主義圏を作り上げた。共産党の一党支配のもとで計画的な社会主義経済が取られていた。
社会主義政策の一環として国家による住居の建築が進められ、代表的なものにプレハブ構造のマンションであるフルシチョフカがある。1960年代に建設が始まったこれらの集合住宅はソ連末期まで仕様変更を重ねつつ建設が進められたが、そもそも廉価で耐久性や居住性に難があり、倒壊する棟も見られる。
東部には丘陵地が広がり、西〜南岸はリアス海岸で、穏やかな水面を利用して海苔の養殖が盛ん。国内のほぼ全域が温帯で、北朝鮮との国境付近のみ亜寒帯が分布し全国的に冬季は雨が少ない。1970年代に農業の近代化が図られたが依然零細農家も多い。北部では水稲と冬小麦の二毛作が行われ、南部では野菜や工芸作物の栽培が盛ん。
朝鮮戦争を経て北緯38度線付近の休戦ラインで南北に分裂し、北部は朝鮮労働党が支配する朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、南部には大韓民国(韓国)が成立した。
半島を通して、日常生活の中に儒教の影響が強く見られるが、宗教というよりも良識・マナーに近い感覚のため韓国などではキリスト教徒が3割を占める。
表音文字であるハングルを使用し、伝統的服装として女物のチマチョゴリなどが挙げられる。床暖房のオンドル、冷麺や唐辛子を利用した保存食のキムチなども有名。
地下資源に恵まれないために輸出加工区を設置するなど輸出志向型工業化政策が行われ、1960年代後半には漢江の奇跡と呼ばれる経済成長が始まり、当初は軽工業中心だったが70年代には重工業化を達成、70年代後半には機械産業が発達した。
90年代からは産業のハイテク化が進展し96年にはOECDにも加盟したが、賃金の上昇に伴う競争力の低下、タイのバーツ暴落に起因する97年のアジア通貨危機、国内の地域間格差の拡大、先進諸国との貿易摩擦などの問題も発生した。
アジア通貨危機以降は外貨規制の緩和と外貨導入が進められた。現在は韓国経済の特徴であった財閥の整理など改革が進められ、造船・家電・IT機器・自動車の分野で世界有数のシェアを誇り、小さい国内市場を反映し、輸出に有利な音楽やゲーム等といったコンテンツ産業の育成も進められている。
韓国は人口密度が高く、総人口の約半数が首都圏に、更に五分の一がソウル市に集中している。仁川国際空港、KTXなど交通も発達している。一定以上の規模の国・地域の中はもっとも合計特殊出生率が低く、2023年のデータで0・72人である。
北部の山間部、南部の平野部、さらにマレー半島部に区別して考えると良い。例えば北部の山間部では稲作が盛んで、南部では天然ゴムのプランテーションが行われている。またマレー半島部ではアブラヤシのプランテーションが盛んだ。そのほかパイナップルやマンゴー、サトウキビ、キャッサバなどの熱帯性作物の栽培も行われている。
環太平洋造山帯に位置する新期造山帯の島で、本州島より小さいが島の太平洋側を縦貫する台湾山脈には4000m近い山も分布し日本より急峻。台湾島中部を北回帰線が通過する。Cfa気候の国で南端のみ熱帯モンスーン気候が分布するが全土を通じて温暖で、熱帯性作物の栽培が行われる。南部の平野では灌漑が発達し稲作が盛ん。
東南アジア由来の先住民である高山族が居住するが、清代に本土の政治体制に組み込まれ、日清戦争後第二次世界大戦までは日本の植民地だった。戦後、国共内戦に敗れた中国国民党政府が根拠地としており、これ以前に台湾に移住していた人々を「内省人」、これ以降に移住した人々を「外省人」と呼称する。
台湾はアジアNIEsの一員とされるほど工業が発達しており、台湾島南部の高雄などに輸出加工区が設置され工業生産が盛ん。島北部には新竹(しんちゅー)が位置し、台北に近い立地とサイエンスパークに指定されていることからエレクトロニクス産業(半導体など)が集積し、台湾のシリコンバレーとも呼ばれる。
経済発展から台湾から中国沿岸部への投資額は増加傾向で、日本へはパソコンなどの機械類や魚介類の輸出が盛んに行われている。
※ 台湾島と九州の面積はほとんど同じ。
[→中国]
北部には溶岩台地のケマ高原が広がり、中国との国境部の北端には長白山脈が発達しており、最高峰は白頭山。北端の山脈に沿って中北国境となる鴨緑江が流れ、遼東半島南部に流下する。同じ水源地から北中露の国境となるトマン川が流下する。
朝鮮戦争を経て北緯38度線付近の休戦ラインで南北に分裂し、北部は朝鮮労働党が支配する朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、南部には大韓民国(韓国)が成立した。
半島を通して、日常生活の中に儒教の影響が強く見られるが、宗教というよりも良識・マナーに近い感覚のため韓国などではキリスト教徒が3割を占める。
表音文字であるハングルを使用し、伝統的服装として女物のチマチョゴリなどが挙げられる。床暖房のオンドル、冷麺や唐辛子を利用した保存食のキムチなども有名。
韓国北部と同様の冷帯冬季少雨気候に国土のほぼ全域が覆われ、冬季は極寒で北部の鴨緑江は凍結する。冬から春季にかけてシベリア高気圧の影響を受けて三寒四温の天候となる。石炭(=古期造山帯)や鉄鉱石(=安定陸海)、タングステンなどに恵まれ、南北分断前は「北の鉄鉱業、南の農業」と形容されたが現在はほとんど枯渇。
主体思想(チェチェ思想)に基づく千里馬運動(チョンリマ運動)が行われ、朝鮮労働党の指導による集団的生産向上・社会発展促進を目指したが、現在は国際的に孤立している。なお、国際連合には加盟している。
人口は約1900万人で銅鉱を多く産出する。経済の対中依存度が高い。南アメリカ大陸の南西に位置し、南北に細長い独特の形状をしている(海岸線の長さは6,000km超え。日本は35,000kmだから...意外と短いのか?)。北部のアタカマ砂漠が広がり、中央部には地中海性気候、南部には冷涼な西岸海洋性気候、そして最南端には寒帯気候が広がるなど、国土における気候の変化が大きい。
太平洋に浮かぶイースター島もチリ領。世界初の自由な選挙による社会主義政権(アジェンデ政権)が成立した国家だが、経済の停滞などからピノチェトがクーデターで政権を奪取し、長期にわたる独裁政権を築いた。1990年に民政移管。
世界有数の銅産出国で、リチウムなどの鉱物資源も豊富。公用語はスペイン語で、カトリックが多数を占めている。
元々ノルウェーで盛んだったサケ(鮭)やマス(鱒)の養殖だが、国をあげた日本からの技術移転(ニチロ、現マルハニチロ)が行われ、チリでの生産が急拡大した。2007年時点で、世界の養殖量の43%がノルウェーで、チリが36%でそのあとを追っている。日本のサケ・マスの輸入量の60%はチリ産である。
2022年に国際連合における国名をターキーからテュルキエに変更した。(→JETRO)
同じく第二次世界大戦での敗戦国である日本と(西)ドイツは近い歩みをしてきた。人口こそ1.5倍(東西統一前はそれ以上)違うが、産業構造には近いものがある。
アルザス・ロレーヌ地方など西欧の炭鉱や鉱山は戦前にとっくに枯渇しており、早くから臨海立地の工業地帯が発達してきた。1970年代から80年代にかけて素材型工業から機械中心の工業への移行が進み、北部の臨海工業地帯の地位が低下した一方南部の地位が向上したため、南北格差が生じた。2000年代からは中国など新興国の台頭で国内ではサービス経済化が進み、南北両地域で経済発展が見られたため南北格差は縮小した。
風力発電が全体の20%を占めているが不安定なため、安定したバックアップ電源の確保が求められる。しかし、低平な土地であるため揚水発電は困難で、原子力発電の廃止を進めているため、現在は石炭火力が主要な予備電源である。
第二次世界大戦後に大量の移民を受け入れ、現在でも世界で2番目の移民受け入れ数を誇るドイツは、ドイツ人の国家でありながら国内に多数の異民族を抱える国家である。その一方で1973年の石油危機では失業率が高まったほか、現在もドイツではドイツ人・移民共に失業率の高い社会が続いている。そのために社会保障費が増大し、言語の障壁や文化的な差異もあり、対立感情が高まっており、一部では排斥の動きも見られる(→ネオナチ[Wikipedia])。
参考:ドイツの都市 人口ランキング
1.ベルリン 2.ハンブルク 3.ケルン
ケルンは世界最大の高さの尖塔を持つゴシック様式のケルン大聖堂で知られる。
南部のニジェール川デルタ(ニジェール・デルタ)はギニア湾岸に面する広大なデルタで、農耕が盛んであるとともに油田地帯でもある。1967年から1970年にかけて、イボ人とその他の民族による内戦(ビアフラ戦争)が発生した。油田地帯を領域とするイボ人はビアフラ共和国の分離独立を宣言していたが敗戦、多数の餓死者や死傷者を出しつつ終結した。ナイジェリア内戦とも。
最高峰はエベレスト(8848m)。チベットではチョモランマ、ネパール現地ではサガルマータと呼ばれる。標高1200m地帯のカトマンズが最大の都市で、標高2000m地帯までは水田が普通に見られる。
人口は約700万人。ラプラタ川支流のパラナ川に建設されたイタイプダムはブラジルとの国境に位置し、発電量は三峡ダムに次いで世界2位の1260万kw。パラグアイは余剰電力を輸出に回している。[→エネルギー]
バナナの生産が盛ん。比較的英語話者も多いのでコールセンターなどのBPO業務(Business Processes Outsourcing Service)が立地している。
フィリピン最大の島で南西岸には首都マニラがある。モンスーン気候帯に属しサバナ気候が広がるため米の二期作や熱帯性作物の栽培が行われる。西部のピナトゥボ火山に代表されるように火山が多い。棚田も見られ、コルディリェーラ(同島北部)の棚田群は天国へ至る階段とも呼ばれる。フィリピンの領域は大半が北のルソン島と南のミンダナオ島にはさまれた区域に属する。
安定陸塊が国土の大半を占めるため、燃料資源には恵まれなかった。そのため、代替燃料のバイオエタノールを利用するFlex燃料車などが普及した。バイオエタノールの生産もアメリカ合衆国に次ぐ世界2位を誇る。しかし、現在では海底油田の開発に成功し、原油の自給率は100%である。
エンブラエルという元・国営のジェット機メーカーが存在し、エアバスやボーイングに比べると存在感は薄いがそれでも世界3位の航空機メーカーである(ただし、「航空産業」という観点では航空機での国際分業が極めて発達していることから単にメーカーの所在地だけでは決定できない)。リージョナルジェットが主軸のようで、日本国内でも就航している模様。
ブラジル南部のブラジル高原では、コーヒーのプランテーションが、北東部ではサトウキビのプランテーションが行われる。コーヒーは輸出向けの企業的栽培が盛ん。サトウキビ栽培はファゼンタでコロノを使役することで行われている。
近年、カンポセラードとよばれる地域での大豆の生産が急拡大している。元々は粗放な牧畜地域であったが、中国などでの大豆需要の拡大を受けて転換が進んだ。大豆は植物性油脂の原料として有用なうえ、搾りかすは飼料などとして利用できる。世界の大豆輸出量の40%をブラジルが占め、輸出量の60%を中国が占めている。
西欧の中心の一角を占める国家。現在はドゴールが築き上げた第五共和制。王権が発達していたため中央集権的な国家であり、小国分裂時代が長く続いたドイツや、州の連合体であるアメリカ合衆国などの地方分権的な国と対比される。
フランス西岸にはナントやボルドーが位置し、ボルドーでは航空機産業も行われている。
しかしフランスの航空機産業の中心はトゥールーズで、関連産業が集積するとともに域内分業によりEU圏全体の航空機産業の中枢となっている。南部のマルセイユは古代ギリシア以来の貿港で、現在は工業港としての性格を強め、重化学工業が発展している。フォスはマルセイユの西郊に築かれたマルセイユの新港である。フランス中東都のリヨンはロース川の上流部で水運と陸運の要衡としてパリに次ぐフランス第2の大都市園を形成している。そのため金融や情報産業も集積するが、伝統的な絹織業も盛んで重化学工業も発達している。セーヌ川河口のルアーブルはマルセイユに次ぐ貿易港で、石油化学工業が盛ん。セーヌ川をさかのぼるとフランスの首都で最大の都市パリが存在し、パリは同国の文化や政治、金融の中心地である。ただ、フランスに限らず西欧の都市は多くが首都も有数の重化学工業地帯であることに留意するべき。ドーヴァー海峡に面するダンケルクは、フランス有数の貿易港であるとともに第二次世界大戦後に建設された輸入鉱石利用の臨海型製鉄所でも知られる。北東部のロレーヌ地方はフランス最大の鉄鉱石産地で、中心のメスやナンシーではその鉄鉱石を利用した重工業も発展した(なお、品質は低いそうな)。アルザス地方とともに長年にわたりドイツとの係争地となっていた。北部から北東部はいわゆる青いバナナの一部。
自国を舞台にした二度の戦争でアメリカ合衆国を追い払ったために、「アメリカ合衆国に勝った唯一の国」とまで言われることがある。
インドシナ戦争、ベトナム戦争での混迷を経てようやく1976年に南北を統一したベトナム社会主義共和国が成立した。そのため目に見えて経済発展が始まるまでが遅く、1986年にスタートしたドイモイ(刷新)政策の効果は2000年代以降の工場立地急増で実証されることとなる(ドイモイ開始で労働者の育成が始まり、ある程度の期間を経たことで一定数の熟練労働者を確保できるようになったため)[→主な国際機関・国家間協定|ASEAN]。現在、経済発展中。
ベトナム南部に存在するハロン湾はトンキン湾の支湾であり、風光明媚な石灰岩質の奇形の島々で知られる。
人口は約3300万人で水産業が盛ん。経済の対中依存度が高い。
第二次世界大戦後、オーデル・ナイセ線の設定でポーランドはソヴィエト連邦に東部を割譲し、ドイツ東部の旧東プロイセンを編入した。これにより、ドイツ人を中心にオーデル川周辺に強制移住させられた住民が生じた。
香港は旧イギリス領。1997年7月、以後50年間は資本主義体制を維持するという「一国二制度」を採用するという約束のもと中国に返還された。中継貿易や金融業で栄え、中国からの難民を労働力とした衣類・繊維品の生産や、電子機器や精密機器の生産も行われている。
マカオは旧ポルトガル領。チュー川のデルタに位置し、1999年末に中国に返還されたが、それ以前もポルトガル本国による統治の実態はほとんどなかった。カジノなどのリゾート開発が盛ん。
東南アジア諸国の中では輸出額が大きく、機械類の輸出が盛んなほか、天然ガスが産出する。天然ガスの輸出先のトップは日本(日本の輸入元トップはオーストラリアで、ついでマレーシア)。1970年代にペナン島に自由貿易地域(輸出加工区)が設置され、1986年以降のマハティール首相によるルックイースト政策のもとで急速な輸出指向型の経済発展が進んでいる。
人口約6000万人、黒人が8割を占める国家。かつて有色人種差別政策で知られたが、国内での反発、ネルソン=マンデラらによる運動、国際社会の批難の高まりや経済制裁をうけて、デクラーク大統領のもとで1991年6月に完全に廃止された。日本人も有色人種だが、日本は先進国で経済的な結びつきもあったため政治的配慮から「名誉白人」とされ差別の対象外であったというエピソードもある。
憲法上の首都は行政府がプレトリア、立法府がケープタウン、司法府がブルームフォンテーンに置かれているが、最大の都市は人口490万人を擁し旧トランスヴァール共和国の首都であったヨハネスバーグである。ヨハネスバーグには同国最大の金鉱がある。
1910年までにイギリス連判の自治領となり1961年に共和国として独立したが、工業化はあまり進んでおらず、輸出品目は資源への依存度が高い。
1962年以降、近年(2011年)まで軍事政権が支配していたため経済制裁を受けて経済発展は停滞。アウンサンスーチー氏のもとで民政移管が行われたが、2021年に軍事クーデターが発生し軍事政権に逆行した。
東アジアに位置しモンゴル高原北部を占める平均標高1600mの内陸乾燥高原に位置する国家。西部は古期造山帯のアルタイ山脈で石炭を産し、南部にゴビ砂漠、中央部に短草草原、北部にタイガとステップが広がる。年較差が大きく冬季は極寒。
面積は日本の4倍以上だが人口は40分の1ほど、人口密度も日本の150分の1ほどである2人/km2で国連加盟国中最低。世界で2番目の社会主義国で、ネグデルと呼ばれる農牧業協同組合による集団化を図ったが1992年に社会主義を放棄した。馬と羊の放牧が中心産業で、馬を役畜 / 燃料 / 交通 / 飲料として活用するが、遊牧民の定住化も進む。ゲルを使用。チベット仏教の信仰が盛ん。ロシア文字とモンゴル文字(復活)を使用する。
正しくは「ヨルダン=ハシミテ王国」「ヨルダン=ハシェミット王国」などでアカバ湾で紅海に接する以外はほとんど内陸国。パレスチナ難民を多く受け入れるが、近年はシリア難民も多い。
山岳地域が国土の大半なうえメコン川での水運は困難。主要産業は農林業であり、所得水準が低い。
隣接するタイや中国、ベトナムと密接な関係を構築しており、輸出額の8割をこの3国が占める。全体に丸太の輸出が多いほか、中国へは銅鉱石を、ベトナムには製材を特に多く輸出している。
タイにおいて経済発展し電力需要が増加したことをうけ、ラオスは外国資本の導入によりメコン川流域での電源開発を進め、「インドシナのバッテリー」としてタイ(現在はベトナムも増加)へ電力を輸出している。現在、電力はラオスのタイへの首位の輸出品目となっている。内陸国のラオスでは輸送の不便もあり外資の進出がわずかで、製造業による輸出指向型工業化を進めるのが困難である。
電力供給の増加は国内産業の発達を促進するが、ダム建設は自然環境や生態系を破壊し水質を悪化させる懸念があり、漁業も衰退しかねない。
シベリア地方は鉱産資源や森林資源に恵まれるが、寒冷なため人口が疎で市場は小さく経済発展がかなり遅れ、インフラの老朽化も進んでいた。そこで行政はウラジオストクの自由港化や社会経済開発特区(経済特区よりも優遇措置が大きい)の設置、北朝鮮からの移民受け入れを進めるとともに、中国との結びつきを強めた。欧米との関係性が悪いロシアと資源を求める中国の利益が合致した形。
北海近くにサンクトペテルブルクが位置し、ノヴゴロドも同じくサンクトペテルブルク工業地域に含まれる。ウクライナ国境地帯付近の黒海北岸はドネツク炭田を中心に発展したドニエプル工業地域であり、ウクライナ西部にはウクライナ炭田が存在する。ヴォルガ川中上流域はヴォルガ工業地帯で、ドニエプル・ヴォルガ両工業地帯の北方はモスクワを中心としたモスクワ工業地帯でヴォルガ川の水運で発達するとともにシベリア鉄道の西端でもある。
カフカス地方にはアゼルバイジャンのバクー油田を中心としたバクー工業地帯が位置する。第二バクー油田などの油田や複数の鉄山が存在するのはウラル工業地帯で、ヴォルガ工業地帯の東方に位置しシベリア鉄道が通る。そのまま南下するとカラガンダ工業地帯やタシケントなどを含む中央アジア工業地帯に至る。
ウラル工業地帯からシベリア鉄道で東へ向かうとオビ川上流域にクズネツク炭田を中心とするクズネツク工業地帯が存在し、かつてはウラル工業地帯の鉄鉱石とともにコンビナートを構成していた。なお、オビ川では水力発電が盛んなほか、流域にはペチョラ炭田(かなり高緯度地域)・西シベリアガス田(河口部)・チュメニ油田などが存在する。またシベリア鉄道で東へ向かうとアンガラ・バイカル工業地帯に到達する。
これはエニセイ川の上流地域で、本流や支流のアンガラ川で水力発電が盛んである。イルクーツクやチェレンホヴォ炭田などが含まれる。ここでシベリア鉄道はバイカル=アムール鉄道と名を変え、さらに東進するとハバロフスクやウラジオストクなど極東工業地帯に至る。オホーツク海では漁業が盛んな他、サハリン(樺太)では石油や天然ガス田の開発が進む。